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二〇〇八年改正

直近の大きな改正は二〇〇八年に行われました。この改正の契機になつたのは、二〇〇五年に発覚した埼玉県富士見市在住の当時八十歳と七十八歳の姉妹に対する、信販会社からの競売申立です。この事件そのものは、クレジットの問題と言い切ることはできませんが、悪い面が徹底的に表面化した事件といえます。事件の概要は、次のとおりです。高齢の姉妹は認知症を患っていて、判断能力はほぼない状態でした。自宅は自己所有です。この姉妹に三年間にわたって一六社にも及ぶリフォーム業者が訪れ、必要もないリフォーム契約を五〇〇〇万円以上も結んでいました。

例えば、普通は三つもあれば十分な床下換気扇が二〇個以上も取り付けられたり、わずかー一日間に五回で六七三万円分の白アリ駆除などを売りつけた業者もありました。この姉妹はかなりの資産家だったらしく、これらの支払いは現金で行われていました。手持ちの現金が底をつくと、リフォーム業者はクレジット契約を使うようになりました。クレジットの審査は契約者の3C(収入、資産、性格、担保)が基準になります。認知症の姉妹に収入があって、判断が正常にできたのであれば問題はなかったのですが、この姉妹にあるのは資産だけでした。

クレジット契約は結んだものの当然のごとく払えなくなり、クレジット会社が自宅の競売申立を行ったことでこの案件が表面化し、悪徳リフォーム業者と信販会社の存在が問題化したのでした。二〇〇八年改正の直接の原因はこの事件です。悪徳加盟店と信販の問題は、一九八四年改正の以前から表面化し、とりあえずはこの年の改正で鎮静化したのですが、その後も本質的な解決に至らずに最悪の形で社会問題となったのです。そこで割賦販売法を所管する経済産業省は法改正に向けて動きだしました。国会に提出される法律には閣法といって、内閣つまり政府が提出する法律と議員立法の二つがありますが、割賦販売法は閣法なので準備は経済産業省が行います。

消費者信用の金融の部分を所管する貸金業法はそもそもが議員立法ですから、割賦販売法とは生成の過程が違います。閣法の改正準備は、審議会で一定の結論を出して、それを事務方の省庁が法案化するという過程を踏みます。審議会については、行政改革や役所批判の観点からいろいろと槍玉に挙がっていますが、それはさておくとして、産業構造審議会割賦販売分科会という審議会で議論が進められました。富士見市で起きた住宅リフォーム事件が発覚したのは二〇〇五年五月のことです。そのおよそ一年半後の二〇〇七年二月に、第一回の割賦販売分科会が開催されました。第一回の審議会で配布された資料によると、この会議の検討項目は次の五点です。

①悪質商法を助長する不適正与信の排除

②過剰与信の防止

③クレジット取引関連事業者の責任と役割

④クレジット取引の規制対象範囲

⑤その他

一番の項目に挙がっているのが、まさに富士見市の事件対応の意味です。