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法改正によってタテ割りが固定

行政の報告書の提言どおりとはいきませんでしたが、CRINの開始によってわが国のクレジット業界が大きな一歩を踏み出したことは間違いありません。CRINの開始後わが国経済はバブル経済に突入し、多重債務の問題はそれほど大きな問題にはならなかったように思います。景気が良くて収入が増える循環は、クレジットには最もいい環境だからです。ところが一転してバブル経済が崩壊すると、「カード破産」が問題視されるようになります。ちょうど一九九二年ごろのことですが、この年にクレジットカードの発行枚数は二億枚を超えるようになりました。クレジットカードを発行する会社も大幅に増えました。

カード破産とはいいますが、それを後押ししたのはキャッシングの利用であって、その返済のための貸金業着からの借金であることが一般的です。そうなると貸金業者の個人信用情報が持つ価値は、他業者にとって極めて高いということになります。すでに事業を開始していたCRINにおける情報登録の原則は「一情報一登録」というもので、この原則に従っている限りは他機関の登録されている残高情報、すなわち無事故の情報を交換することはできません。そこで浮上してきたのが、複数の情報機関に加入して、事実上の残高情報の交流を進めるという考え方です。

もちろんCRINの中で残高情報を交流させるという考え方もあったのですが、この間題を検討していた「個人信用情報保護・利用のあり方に関する懇談会」は、複数加盟のスタンスを明確にしたのでした。この懇談会は、金融庁と経産省が初めてクレジット問題を共同で取り上げ検討したものでした。それだけ画期的だったということができます。この懇談会の報告は、テラネットという新しいタイプの個人信用情報機関の設立を促しました。二〇〇〇年に営業を開始したテラネットは、全国信用情報センター連合会が持つ個人信用情報を他業態の会員用のデータベースに作り直し、それらを交換することによって、複合入会と同じ効果を持たせることを可能にしました。

その情報を利用したいカード会社などの他業態の会員はテラネットに入会する、という仕組みです。ただし、他業界とはいっても金融機関は入っておらず、消費者金融の情報も残高なしの件数だけのものでした。かなりのカード会社が参加しましたが、二〇〇三年に個人情報保護法が制定されて、これまでの自主規制と行政指導だけだった時代から法規制の時代に移行したこともあって、不参加だった会社もたくさんあります。個人情報の利用に関する同意が取れていないというのが懸念の材料でしたが、役所からの指導もあったといいます。また、テラネットの開始前にあたっては消費者金融業界内に、他業態に情報を開放することに反対する意見も根強くありました。

残高のみとはいえ、テラネットのアイデアは斬新なものでした。ところが二〇一〇年に貸金業法が施行になると、状況は大きく変わります。法律が個人信用情報機関を指定して、貸金業者にそこの利用を義務づけるという規制です。法律によって貸金業登録を受けていれば、貸金業法が指定する個人信用情報機関に入らなければならなくなったのですから事態は一変です。このときに指定個人信用情報機関に認定されたのは、貸金業系の株式会社日本信用情報機構と物販系の株式会社シー・アイ・シーの二社です。貸金業法の規定では貸金に関する情報は、指定個人信用情報機関において交換することになっていますから、どちらかに入っていれば確実にすべての情報を把握することが可能になりました。